VHDLとTEX使いによる使い心地.
ドキュメントビューアとして
TyporaはWYSIWYGエディタだが, ビューアとしてはとても優れていると感じている. Markdownに対応したエディタの多くはソースファイルを開き, ビューアモードを開くことでドキュメントとして扱われる. htmlのように「エディタで編集・ブラウザで閲覧」というような切り替えができていない. VScodeのような高級なエディタで開き, ソースとビューアを並べて表示する場合が多い. 対してTyporaはソースファイルはまずビューアモードで開かれる. そのため完成したドキュメントを読むビューアとして優れていると感じる. またWordのような文書作成ソフト(?)に比べて動作が軽い.
ページ区切り
(これはMarkdownの仕様であるが、)WordやTEXは印刷やpdfへの出力を前提としているため, それらの出力サイズに合わせたページ区切りが行われてしまう. Typoraはむしろhtmlに近いためページ区切りを持たない. 端末での閲覧を前提とした今日では断然こちらのほうが良い.
アウトライン機能
Typoraはアウトライン機能に対応しているため, ある程度の分量でも体裁を保つことができる. 当然WordやTEXでもpdfに目次を埋め込むことができるが, Typoraのほうが簡単に実装できる.
VScodeのようなエディタを入れて更にパッケージをインストールして・・・のように導入コストもインストールするだけで済むため, これまでMarkdownに触れてこなかった人に向けてアピールするのにピッタリだと思う. WYSIWYGとして表示されるため, Markdownを意識しなくても閲覧できるのは他にはない利点である.
VHDLとの相性
なんとVHDLとの相性は良く, VHDLを言語としてきちんと認識してシンタックスハイライトしてくれる. Githubとの表示の互換性のためだろうか. またソースコード表示のタブサイズは標準で4文字なので, むしろGithubよりも見やすい. なんとVHDLのソースをコピペして最も読みやすいMarkdownビューアはTyporaだったという・・・.
TEX
Typoraは簡単な数式であれば, \TeXの記法をサポートしている. がっつり数式を書き始めると複数行の数式が必要になるが, これは対応していない. 具体的には$F=ma$
は対応しているが,
\[
f=ma
\]
や
\begin{align}
f=ma
\end{align}
などには対応していない. しかし標準で\TeX記法に対応したエディタ自体が限られるので, おもむろに(おもむろに?)数式を書き出せるのは便利である.
より\TeXに近い数式を書きたければ, VScodeのパッケージであるMarkdown Preview Enhanced(MPE)が良い. 複数行の数式にも対応しており, パッケージはJSONのため編集もできる.
図
flowchart.jsに対応しているため, 画像としてフローチャートを埋め込む必要がない. \TeXであればpdf画像を埋め込むことができるため, 画像の劣化を起きず, 画像内の文字もきちんと認識される. pdf画像に対応したMarkdownエディタでもpdfを変換することで, 画像内の文字が認識されなかったりするため, テキストが認識される画像は貴重である. 個人的にはflowchart.jsが最もフローチャートを描きやすい.
MPEではWaveDromと言う信号タイムチャートにも対応しているため, できればこれも対応してほしい(組み込み系の感想).
図の対応は方言になるので, あまりソフトに依存するのもいかがなものかとも思っている. ビューアにも依存しないファイルがベストなので(つまりdocxは最悪である).
エクスポート機能
エクスポートできる種類が非常に多く, Markdownを知らない人間にもドキュメントとして渡しやすい. 特にPDFによる出力がある. MPEも多くのエクスポート形式があるが, PDF出力にはPandoc+\TeXを必要とするため導入しにくい. TyporaのPDF出力は見た目も維持しているし, アウトライン機能も維持していたりとなかなか強力. 参照機能には対応していないのでそこもカバーできていれば, \TeXにかなり肉薄できたと思う. ササッと書いてPDFで配布するようなドキュメントならTyporaが一番簡単に整った体裁になる.
表
Typoraの目玉機能として挙げられるのが表のGUI記入だろう. Markdownの記法に問題があるといえるが, 表は作るのが大変である. MPEではcsvファイルのインポートで解決していたが, Markdownで完結するためにはTyporaのようにGUIで記入できるのが最善だろう. 「表といえばExcel」という現状を打破できるが素晴らしい. 「日本人表好きすぎ・Excel好きすぎ問題」の解決策である.
二重改行問題
Typoraをビューアモードで編集するとき, 改行を行うと2回改行が挿入される. これは改行を段落分けとして扱っているためらしい. 「そもそも文章はピリオドや句点で文が区切られても改行は行われない. 頻繁に改行はなされないはずだ」と考えているらしい. しかしマークアップ言語の多くはソースコード上での改行とは別に改行要素を持っている. Markdownも同様に
(スペース2つ)で改行される. これらに基づけばTyporaのビューアモードで改行キーを押したときの動作は
- 改行の挿入
- 改行されない(ソースコード上でのみ改行)
と考えられる. またはスペース2つの入力で改行がなされるべきである.
「ソースコード上では1文1行」とか「ブログ文体では1文1行」といった理由からこの二重改行は大変相性が悪い.
またビューアとしてもソースコード上の改行がそのまま改行として表示されるため, 一般的なMarkdownの改行とは異なる. スペース2つの入力による改行はソースコードモードのみで行われ, ビューアモードではいくらスペースを入力してもその文だけスペースが増えていく.
Windows・OSX版の違い
ツイート参照. 右がWindows版, 左がOSX版.
Typora Windows版との比較
— toms (@toms74209200) 2019年2月7日
Windows版だけ使ってたときはけっこうきれいだと思ったんだけどなあ
Windows版は左下にソースコードモードがあるのがいいですね pic.twitter.com/8DvVSK7K3t
Windows版はなんかフォントが間抜け. ただソースコードモードが左下にあるのでソースコードとの切り替えがしやすい. インターフェースの違いはそのへんだけでほとんど違和感なく使える. ほとんどのマルチプラットフォームアプリではこれができない.
エディタとして
そもそもMarkdownをわざわざプレビューしながら編集するのかという問題にあたってしまった. Markdown自体がプレビューしなくても見やすいマークアップ言語として作られているため, ソースだけでも十分なのだ.
表の作成は確かに強力だが, 表はExcelで作ってあとからTyporaにコピペすればいいだけで(結局Excelから逃れられていない・・・), ドキュメントの根幹ではない. ドキュメントの大半を占める文章の作成時に二重改行問題が起きるのはとても悩ましい. ソースコード上の改行がそのまま反映されてしまうのはそこまで問題ないが, 改行の入力によって二重に改行されてしまうと, みるみる改行が増えていってしまう. これは文章を書くときのリズムにも関わってくるので大きな問題である.
またWYSIWYGエディタの問題として, ソースコードと表示で大幅に異なる場合の表示の遷移がある. ハイパーリンクや\TeX記法では大幅に見た目が変わるため, 入力位置の視点がずれる. これにも集中力を下げられる.
これら二重改行やWYSIWYGエディタとしての根本的な問題からビューアモードで編集することはまずない. であればエディタとしてより優れたソフトで編集したほうが良い.
ということで個人的にTyporaをエディタとして使うには不向きだという結論(を今Typoraで書いている)になってしまった.
ただしMarkdownドキュメントをそのまま読んだり, 他の形式にエクスポートしたりするには他にはないレベルで優秀.
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